小笠原諸島、世界自然遺産に決定 固有の生態系評価
【パリ=古谷茂久】パリで開かれている国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第35回世界遺産委員会は24日、小笠原諸島(東京都小笠原村)を世界自然遺産に登録することを決めた。大陸から隔絶された島々に、独自に進化した多様な動植物が生息していることが評価された。国内の自然遺産は屋久島(鹿児島県)、白神山地(青森、秋田県)、知床(北海道)に次ぎ4番目となる。
小笠原諸島は東京都心から約1千キロ南にあり、大小約30の島々が連なる。登録地域は父島や母島の一部、聟(むこ)島列島など陸・海域の約7940ヘクタール。29日の採択を経て正式登録される。
同諸島は4千万年以上前に島ができて以来、大陸と一度も陸続きになったことがなく、江戸時代まで無人島だった。このため過去に島にたどり着いた生物が狭い陸地で進化を遂げている。小笠原諸島にすむカタツムリとその化石を調べれば、過去にカタツムリが少しずつ形を変えながら種が枝分かれしてきた進化の歴史を確認できる。
カタツムリ以外にも、オガサワラオオコウモリやメグロなど貴重な動植物が生息する。今回、各国から推薦された世界遺産は30件以上。世界自然遺産の諮問機関である国際自然保護連合は、小笠原諸島には固有の生物が多いことや、生息環境が保全され絶滅率が低いことなどを評価した。
審査では外来種が問題となった。小笠原諸島では近年になって人間が持ち込んで野生化したヤギやネコ、北米産のトカゲなどが固有種を食い荒らし、特異な生態系を脅かしている。このため環境省や自治体は外来種を捕獲し生態系を保全する体制を整え、登録決定にこぎ着けた。
登録決定後、小笠原村の石田和彦副村長は現地で報道陣に「首都東京に自然遺産ができるのはすごいことだ。これまで以上に保全に努めたい」などと語った。