若者が魅力に感じる中小企業とは?
大同生命・北原睦朗社長(5月7日)
日本の企業数で99%超、従業員数で約7割を占める中小企業は日本経済の基盤ですが今、深刻な人手不足に直面しています。昨年12月に大同生命保険が実施した中小企業経営者アンケートでは約7割が「十分に採用できていない」と回答しました。日本の生産年齢人口(15〜64歳)はピークの1995年に約8700万人だったのが、少子高齢化の影響で2023年10月時点では約7395万人まで減少したことが要因と考えられます。
対策は急務です。ITや人工知能(AI)の活用は一案ですが、ハンドメード中心の製造業や飲食業、対面販売の現場などでは必ずしも有効とは限りません。企業規模の関係でデジタルトランスフォーメーション(DX)の恩恵を受けにくいという側面もあります。賃上げは有効でしょうが、経営資源の限られた中小企業では実現が難しい場合があります。
大同生命の契約者は多くが中小企業です。私たちは中小企業を支援する様々なサービスを提供しています。人手不足の解決に向けた支援を目的に、人材採用・育成に関する相談窓口「人材よろず相談」を今年1月に設置しました。3月までに約70件の利用がありました。高校生の採用に対象を絞ったメディアを仲介するサービスや採用後の従業員教育を支援するといった専門的なサービスも用意しています。
これからも地球上で長く暮らしていかねばならない若者の多くは、企業が環境問題に取り組む姿勢について敏感です。大同生命は中小企業向け「サステナビリティ経営実践ガイド」を2月に発刊しました。中小企業がサステナビリティ経営に取り組むヒントを提供するためです。
採用が困難になる中で、従業員がより元気に長くいきいきと仕事を続けられるよう、健康経営の推進に対するお手伝いにも力を入れています。
最近の若者は価値観が多様化し、経済観念が発達しています。高価なブランド品より、安くても自己を表現できるオンリーワンの商品を求める傾向が強いと聞きます。例えば現地のマイクロ店舗まで実際に足を運ばないと買えない一点ものの古着が人気を集めているのはその表れです。
「自分らしさの追求」「個性の発信」といったキーワードにきめ細かく応えるのは、中小企業の方が得意と言えるでしょう。働く場所という視点でも、中小企業は既存の枠を超えた何かを探求する若者が、自らの夢を実現できる場になるのではないでしょうか。今、中小企業には「風が吹いている」気がするのです。
人間の役割を置き換えるAIの台頭は逆説的ですが、人間でなくてはできない仕事の価値を再認識するきっかけになりました。ハンドメードのモノづくり、クラフトマンシップがいよいよ輝きを増します。
こうした中小企業の魅力をいかにして伝え、振り向いてもらえるようにすればよいのでしょう。若者が中小企業に就職したくなる動機付けについて読者の皆さんのご意見、アイデアを頂戴したいと思います。
編集委員から
即効性のある人手不足対策は賃上げです。2023年版中小企業白書によると、労働分配率(企業の利益などを人件費に振り向けた割合)は小規模企業が91.0%、中規模企業が78.8%で、大企業は52.4%。既に人件費の比率が高い中小企業は賃上げの余地が少ないのです。
大同生命保険の北原睦朗社長は賃上げやデジタルトランスフォーメーション(DX)ではなく、Z世代の若者が持つ社会貢献への情熱、高価なブランド品よりもオンリーワンの製品を求める姿勢に着目しました。クラフトビール、クラフトウイスキーに続き、最近は原料や産地が特徴的で少量生産のクラフトジンがブームなのも同じ流れでしょう。
これから就職活動に臨む皆さん、各自の個性を生かし、社会貢献への達成感も得られる職場・働き方とは何でしょう。マスプロダクションのジンを大企業、クラフトジンを中小企業に置き換えてみると、規模の大小を超越した意外な魅力が浮かび、別の地平が見えてくるかもしれません。(編集委員 竹田忍)
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今回の課題は「若者が魅力に感じる中小企業とは?」です。420字程度にまとめた皆さんからの投稿を募集します。締め切りは14日(火)正午です。優れたアイデアをトップが選んで、27日(月)付の未来面や日経電子版の未来面サイト(https://www.nikkei.com/business/future/)で紹介します。投稿は日経電子版で受け付けます。電子版トップページ→ビジネス→未来面とたどり、今回の課題を選んでご応募ください。