先輩たちの生々しい失敗談に、転機の乗り越え方、転び方、失敗を最高の糧にするヒントを学ぶ連載。今回は、産後の母子のケアとサポートをする産後ケアホテル「マームガーデンリゾート葉山」の運営や保育事業などを手掛ける、マムズ社長の斎藤睦美さんです。

 2021年12月、神奈川県葉山町にオープンした日本最大のリゾート型産後ケアホテル「マームガーデンリゾート葉山」を立ち上げたのが、マムズ社長の斎藤睦美さん(32歳)だ。斎藤さんは、子どもが好きだったことから大学で保育と幼児教育を学び、大学卒業後、教育関連会社に勤務。その後、父親(NSグループ会長・荻野勝朗さん)が経営するNSグループに入社し、人事や管理部門などの仕事を経て事業家の道を歩み始めた

マムズ代表取締役社長の斎藤睦美さん。マームガーデンリゾート葉山は2023年までに2000組以上が宿泊した実績がある。出産後の母親たちから、「睡眠不足を解消できた」「景色が良い」「スタッフに気軽に育児相談ができる」など好評を得ている
マムズ代表取締役社長の斎藤睦美さん。マームガーデンリゾート葉山は2023年までに2000組以上が宿泊した実績がある。出産後の母親たちから、「睡眠不足を解消できた」「景色が良い」「スタッフに気軽に育児相談ができる」など好評を得ている

女性スタッフの働きやすさを追求し、保育事業を立ち上げる

 「私は新卒で教育事業を行う会社に入社し、発達障害やグレーゾーンといわれる子どもたちの療育や支援を担当していました。先生として親子向けのトレーニングなどを担い、3年目に教室長を任され、人事や採用などにも従事。療育の専門知識や実践的なサービスの他、ビジネスの流れを一通り学ぶことができたと思います。でも、教育長になってから、『このまま教師をやっていくのかな……』と考えると、もやもやした気持ちになったんです」

 斎藤さんは、幼い頃から事業家として活躍する父親の背中を見て育った。父親は「カラオケパセラ」や豪華カプセルホテル「安心お宿」など、従来のカラオケやホテルのイメージを覆すアイデアで事業を伸ばしてきた。

 知らず知らずのうちに、豊富なアイデアと行動力で進む父親の影響を受けていた斎藤さんは、「自分も父のように、人を笑顔にするビジネスをしたい」と考えるようになった。そこで、3年間勤務した会社を辞め、NSグループに入社。障害者採用のサポートや、ライフイベントを迎えた女性スタッフが勤続しやすい環境づくりに注力した。

 「入社当初は、何かやりたいけれども、自分に何ができるか分からない状態でしたので、まず、できることから始めました。より働きやすい会社にしようと、会社の仕組みづくりに奔走しました。当時、サービス業界では女性が働きやすい環境をどうつくるかが課題になっており、この問題を解消したいと考えたんです。

 その最中の16年、行政で企業主導型保育事業が創設されたのを機に、NSグループでも、ママになったスタッフが安心して働けるよう、企業主導型の保育施設を立ち上げたいと思いました」

 父親の賛同を得て、18年、27歳のときに保育園を立ち上げ、園長に就任した斎藤さん。自社のスタッフから「勤務中に子どもを預けられる」と喜ばれ、地域の利用者も増えていった。しかし、その裏で斎藤さんは、マネジメントにつまずいていた