サフィニア
ペチュニア・サフィニア・シリーズ ‘サフィニア’
Petunia Surfinia Series Hybrid Caltivar. ‘Surfinia’
ナス科 ツクバネアサガオ属
ペチュニア・サフィニア・シリーズ ‘サフィニア’ (‘Surfinia’) は、ナス科ツクバネアサガオ属の植物。サントリーと京成バラ園芸が共同で1989年に開発したペチュニアの園藝品種。なお、「サフィニア」はサントリーフラワーズ(株)の登録商標(日本第2395224号)である。不稔性が高く、草姿が乱れず花期が長いのが特徴で、近年急速に普及している。欧州などの諸外国でも評価が高い。ペチュニアでは初めての本格的な栄養繁殖系。ペチュニアの原種が持つ長日植物である弱点を完全に払拭した園藝品種。開花時期は4月から10月、ペチュニア・サフィニア・シリーズ ‘サフィニア’が成功した後に、品種のバリエーションも増え、現在では、大きいものは10cm程度、小さいものは3cm程度と大小さまざまな花を咲かせる物が現れてきた。花の色は赤、赤紫、紫、青紫、白、白黄、白青、桃など多彩である。10月~11月に株は寒さで枯れるが、基本的には耐寒性の低い常緑多年草である。
概要
原産地はブラジルのパンパ。サントリーの駐在員がペチュニアの原種を数系統持ち帰ったのが品種改良の契機である。従来のペチュニアは原種の伸びやかさを捨て去り、花壇栽培のみに特化した物だけが流通していた。これは商品の流通にもコンパクトさが要求されていたためである。その固定観念から離れた今までには無いクリーピングタイプである。これは流通業界の流れすら変えざるを得なくなった火付け役でもあり、日本の園藝業界の寵児であった。またこのペチュニア‘サフィニア’は栄養繁殖系ペチュニアの実質的な第一号成功例であるとともに栄養系品種が商業的に成り立つ事を証明した記念碑的園藝品種である。今日の栄養繁殖系園藝品種の隆盛はこの園藝品種の成功に負うところが大きい。栄養系繁殖であるため、種子が少ない事もあって花数が多くなる特徴があり、かつ、亜流の植物が出来にくい為、商業的に独占でき、企業にとって非常に優れている特徴がある。この植物は、生育しても草姿が乱れない重要な特徴があり、ヨーロッパなどでも人気が高い。ペチュニア‘サフィニア’が成功すると、同業他社もペチュニア市場に類似の商品を投入し、「ペチュニア戦争」と呼ばれる状況となった。 1990年代から始まる、日本におけるいわゆるガーデニングブームの火付け役でもある。特に保守的で頑なな流通業界の流れすら変えたのは、このペチュニア‘サフィニア’と洋蘭のシンビジウム サラジーン ‘アイス・キャスケード’の2つに依る功績である。これらの2つの植物が大ヒットをしたことから、しなだれるタイプの鉢植えは今までは流通業界から拒まれていたが、これらの大ヒットに伴い、保守的で流通業界主導型であった荷姿すらバリエーションが豊になり、消費者には植物の仕立て方に対する選択肢が広がりいろいろなタイプの植物を得られるようになった。
特徴
従来の一般的なペチュニアと同様、雨に弱く花壇にはあまり向かない。匍匐性(ほふくせい = 地面にはうように成長する性質、クリーピングとも言う)が強いため、プランターや特にハンギングに向く。数あるペチュニアの中でも豪華な品種群である。枝がしなやかで伸びやすいため容易に樹勢の調整が可能で、摘心や切戻しを行うことにより枝数を増やしていき、蕾を増加させてゆく、というのが育成の基本体系である。大輪、中輪、小輪、花色、使用用途に合わせた性質に改良された品種もあるなど、種類も富んでいる。また、名前の「サフィニア」は、匍匐性が強い事から英語のSurfing(サーフィン)と、Petunia(ペチュニア)から得られた造語に由来している。
栽培方法
なお、この項では、季節や気候は日本の東京・横浜・名古屋・大阪・福岡を基準とする。 有る一定期間の成長期間を経て、株が充実したときからは、葉の枚数と同じ数の花が咲く様になる。その為、出来るだけ葉を増やす工夫をするのが上手に育てる上でのヒントである。
置き場所
屋外のよく日が当る、風通しの良い雨の当らない軒下等に置く。特に梅雨などの時期は、長期的に雨に当ると株が弱体化するため、注意が必要である。また、地上からの跳ね返りの水や土なども嫌う傾向にある。置き場所がコンクリートなどの建造物の場合、鉢内の温度上昇と照り返しの日焼けから防除するため、地表から50cm以上の高い場所に鉢を於くことが望ましい。
用土
通気性とある程度の保水性がある、水はけが良い土が好ましい。ナス科の植物に多い連作障害(嫌土)と、ネコブセンチュウに依る障害が発生するため、一定期間使用した土は交換する方が理想的である。
水遣り
乾燥気味な環境に生まれ育った植物から改良された物なので、灌水は乾燥気味をこころがけて管理すると結果がよい。水は地上部にかからないよう、土に直接与えるようにする。水分量は、鉢の重さを目安に行い、軽くなったら鉢から流れ出る位の水を与える。理想はしなびる寸前にたっぷりと灌水するのが好ましい。
肥料
花を沢山咲かせたいのであれば、一般的な草花用の化学液体肥料の1000倍希釈液を、週に1回程水やりの後に与える。元肥として、園芸用の化成肥料等を土に混ぜ込んでおくとなお良い結果になる。
切り戻し・摘心
ペチュニア類は、枝の先端の成長点に成長ホルモンを集める性質が強いため、それを摘心することにより複数の別の成長点に分散させ、枝分かれさせることが可能である。摘心には2種類の方法がある。
長期開花型の摘心方法
植えつけてから初期に1度摘心を行う。伸びている枝の先端を切り取る。その後、1、2回程度の軽い摘心を行い、そのまま開花させる。この場合、株の勢いが若干弱くなる。早い段階から開花を迎えるため、長期間の開花が可能であるが、結果として枝数が少ないため、花数は減る。
多花開花型の摘心方法
植えつけてから、初期に1度摘心を行う。その後、伸びている枝の先端を7月上旬まで調整し、株の開花を抑制する。このとき、全ての枝を同じ長さに切らないようにしたい。全てを一定の長さに切ると、花が団子状になって咲き見苦しい。コツとしては3本の枝を1セットと考え、8:5:3 の黄金比率で摘心すると自然な感じが保てて、花も塊って見苦しく咲く事もなくなる。その後、梅雨を終えてから開花させることで、株の肥大化と枝数増加による多数の開花が可能である。但し、長期的に枝を摘み続けるため、これに伴う生育障害が発生する恐れがある。開花も、長期開花型の方法に比べて抑制を続けるため、結果的に開花期は短くなる。
切り戻し
切り戻しを行うことにより、再び開花を促進する事が可能である。まず、葉が枯れてしまった枝や、間延びした枝を取り去る。適度な長さに切り詰めて、以前と同様の管理をする。枝が成長し、1ヶ月ほどで再び開花する。この際、一回り大きな鉢に移し替えて増し土をし、肥培をする事を推奨する。
発生する病害虫
サフィニア・シリーズの種類
2007年現在、メーカーが発売しているものを以下に挙げる。
- サフィニア・シリーズ
- 「サフィニア・シリーズ」の中心的な一群。
- 大輪系 花の直径が、7~10cm程度
- 中輪系 花の直径が、4~6cm程度
- 小輪系 花の直径が、3cm程度
- サフィニア・エレガンテ・シリーズ
- 「サフィニア・シリーズ」の八重咲き品種。
- サフィニア・フラッシュ・シリーズ
- 植えつけてから、従来のサフィニア・シリーズに比べ、開花を早く迎える品種。
- 中輪系 花の直径が、4~6cm程度
- 小輪系 花の直径が、3cm程度
- サフィニア・ブーケ・シリーズ
- 摘心や切戻しを行わなくても、樹形がまとまって行く品種。また、他のサフィニア・シリーズに比べ、枝が伸びにくいのも特徴。
出典
- サントリー・フラワーズの発売当時のパンフレットと概要。
- NHK出版「趣味の園芸」複数冊からの抜粋。
- 講談社にて花物担当の企画部長からの直接取材。
- 太田市場での現地取材。
- 複数生産者からの現地取材。
- 大手花卉企業数社からの電話取材。