一般に接着剤は樹脂のみによるものと考えられるケースが多い。しかしながら、基材と接着剤の熱膨張率が異なると耐久性が落ちる等の理由によって、高信頼性の接着剤ではシリカ等の固形物を混合する事が工業用では一般的である。他の理由としては、熱伝導率の向上、構造強度の向上、硬化時の発熱の低減、価格メリット等がある。
市販品においてはパテ等の名称で区別する場合がある。
「接着剤」の名称は、大正期にセメダインの社長であった今村善次郎が考案したといわれている。それまで「接合材」や「強力ノリ」などの呼称で呼ばれていたものに対して、今村が当時取引をよく行っていたのが文房具店のほかに薬局であったため、薬局で売りやすいように「材」でなく「剤」の文字を使うようになったとされる。(1920年代ごろの薬局は日用品や調味料などの販売を行い、万屋的側面が強かった。)
異種の物質がくっつく現象である英語のAdhesionは、接着、付着、密度、粘着、凝集などと訳される[2]。ただし、厳密には付着力と凝集力、付着力と粘着力は区別され、接着剤と粘着剤も区別される[2]。接着剤と粘着剤の大きな違いは、第一に粘着剤は接合している間も粘着剤自体は乾燥していないこと[2]。第二に粘着剤による接合は主に凝集力(同種分子の引き合う力)によるものであることである[2]。
付着力の発生の仕組みはよくわかっていないが、吸着説、電気説、拡散説、さらに弱境界層説などが唱えられている[2]。
接着剤の歴史は人間が道具を使い始めた頃に始まった。石器時代には鏃を木の枝や竹に固定するためにアスファルトが使われた[1]。また、漆を使って修理された約6000年前の土器も見つかっている。
石油資源が豊富な中近東ではアスファルトが壁画制作や建築に利用された[1]。古代のバビロニアでは彫像の眼を固定するためにアスファルトが使われた。旧約聖書にはバベルの塔の煉瓦接着や、ノアの方舟の防水処理用にアスファルトが使われたと書かれている。
また、狩猟が盛んなエジプト、中国、ヨーロッパなどでは獣類の皮や骨を煮出したにかわが利用された[1]。古代エジプトではにかわが棺や家具・パピルスなどを接着するために広く使われていた。12世紀頃のモンゴルで作られた高性能の弓は、動物の骨を薄く削った板を複数枚重ねてにかわで接着したものである。
肉食の習慣の少なかった日本などでは、漆(ウルシの樹液)や、米などを原料とするデンプンのりが主に利用された[1]。古代から使われていた漆喰は石垣や煉瓦建築においてよく用いられ、デンプンのりは寝殿造で使われた襖や障子を作る時に利用されてきた。
接着剤の大量生産は、18世紀のオランダに建設されたにかわ製造工場によって始まった。それ以後、天然ゴム・デンプン・カゼインなどの天然系接着剤が各国で製造され始めた。
20世紀に入ると合成系接着剤が続々と登場する。1915年に、初の合成樹脂のひとつフェノール樹脂を積層板製造時に接着剤として使用された事を皮切りに、化学工業の発展に伴って接着剤も開発された。1940年前後にはエポキシ樹脂系接着剤が金属接合に使われ始めた。以後、様々な種類の接着剤がいろいろな用途に使われるようになった。
接合法のひとつにあげられる「接着」は、次のような特徴を持っている。
- 接着しようとする物(以下「被着材」)について、さまざまな種類に対応する。また、種類が異なる被着材同士を接合することもできる。
- 大きさや厚みといった、被着材がどんな形をしているかに左右されない。
- 面と面を接合させるため、応力を分散させることができる。
- 軽く、仕上がりの美観が良い。
- 接着剤は大量生産することができ、また接合作業を自動化することが簡単にできる。
- 気密性・水密性があり、また接着剤の成分処方を変えることで様々な機能を加えられる。
など。
- 一般的に、耐熱性や耐寒性はあまり高くない。
- 一般的に、可燃性のものが多い。
- 被着材の種類に対応した接着剤を選ばなければならない。
- 適切な接着条件を守らないと、その性能を充分に発揮できない。
- 一般的に、一度接着した被着材同士を分離することが難しく、解体が非常に困難になる。
- 被着材とは異なる物質を使うケースが多いため、リサイクルを阻害してしまう場合がある。
- 溶剤を使用した接着剤(プラスチック用、ゴム系など)では使用中の換気を必要とし、悪用すれば有機溶剤中毒に陥る。
など。
接着のメカニズムには5つ存在するが、接着剤においてはそのうちの3つが主に関わっている(物理的接着・化学的接着・分散接着)。場合によっては拡散接着も関与する。
接着は、まず接着剤が被着材の表面を充分に濡らし、次いで硬化する事で成り立つ。
接着は一部を除いて、原子または分子が相互に拡散する溶接とは異なり、接合する界面 (bond line) が存在する。そのため、接着力は被着材の表面状態に大きく左右されてしまい、事前に表面処理を施すことが望まれる。具体的には、洗浄や研磨で異物を取り除く、金属では防錆剤や油分・酸化物を除去する、プラスチックやゴムの成形品では残留離型剤を除去するなどがある。また、一部の被着材にあらかじめプライマーを塗布し、接着力の向上を図るケースも表面処理のひとつにあげられる。
被着材を濡らすために、接着剤は初期に液体状またはそれに近い流体状になる必要がある。固体でも熱や圧力など外部作用により流動する状態に変化できていればよい。この流動性を持った接着剤が、基本的には被着材の接合しようとする面全体に塗布されていなければならない。接着剤の塗布には、器具(はけ、ヘラ、ローラー、コーキングガンなど)を利用した手作業による簡易塗布手法と、大量生産に対応するために専用の設備(エア・スプレー、ノズルスプレー、コーター、ビード、ディスペンサー、ポッティングマシンなど)を使用した塗布方法などがある。
次に硬化し、接合に必要な強度を持つことで接着する。その過程は、重合や硬化剤などとの化学反応、溶媒の蒸発、固体ならば外部作用からの解放や反作用にて行われる。この時、被着材の接合しようとする面と接着剤が適切かつ充分に接触していなければならず、オープンタイムを過ぎているなど接触させるタイミングを逸すると本来の接着力は発揮されない。また、ホットメルトや感圧型、Bステージ樹脂などを除き、接着剤が充分に硬化するまで静置し養生させる必要がある。
接着剤は液体状の塗布タイプと固体状の感圧・感熱タイプの接着剤に分けられる[4]。
液体状の接着剤は塗布タイプと呼ばれており、塗布、圧着、硬化の過程を経て接着力を得られるタイプのものである[4]。
- ラテックス形・エマルション形(Latex & Emulsion)
- 初期状態は高分子の固形分を水中で重合させた懸濁水溶液。コロイド状態の天然または合成ゴムが主体の場合にはラテックス系接着剤、本来水に溶解しない高分子が保護コロイドでエマルジョン化されて水に溶けることができる状態となっているものはエマルジョン系接着剤と分類される。これらは特性を付与するために異なる高分子成分を混合する場合もあり、物性を設計する上での自由度が高い。貯蔵性に優れるが凍結させると分解し本来の機能を発揮しなくなってしまう。常温で接着するが低温の環境では充分に固化せず白化した状態となるため、最低造膜温度(Minimum Film Forming Temperature)上での作業が求められる。
- 接着過程は乾燥固化型で接着剤の水分が蒸発することで硬化して接着する[4]。
- 接着後の体積変化が反応形などに比べて大きい[4]。
- アクリル樹脂系エマルション形やゴム系ラテックス形がある[4]。
- 溶剤形
- 初期状態は合成樹脂やゴムなどの高分子固形分が有機溶剤などの溶媒に溶け込んだ液体状。
- 酢酸ビニル樹脂系溶剤形、ビニル共重合樹脂系溶剤形、ゴム系溶剤形がある[4]。
- 接着後の体積変化が反応形などに比べて大きい[4]。
- 接着過程は乾燥固化型で接着剤の溶剤が揮発することで硬化して接着する[4]。
- 反応系(Reactive adhesives、モノマー・オリゴマーなど)
- 初期状態は化学反応を起こす前の成分を主体とする液体または固体。光や熱などのエネルギーを与える事で熱硬化を開始する。エネルギーの与え方は明示的である場合とそうでない場合(常温反応)があり、前者はオーブンや硬化炉等を用い、後者は常温にて自然に硬化する。なお、後者を用いた場合においても過剰なエネルギーを与える事によって、硬化反応を促進させる、硬化後の物性を変化させる、といった事が一般的に可能である。
- 化学反応は、高温高圧等の条件においては、官能基を持つ一つの化学種で事足りる(単独重合させる場合)が、一般に接着剤を用いる局面ではそのような環境の使用が困難であるため、二種以上の化学種を併用する事が多い。そのため製品としては、使用の直前に混合するもの(2液タイプ)と、工場出荷時に既に混合されているもの(1液タイプ)が存在する。前者は2液に分かれているため保存安定性は良いが、後者は保存安定性と反応性(硬化性)を両立させるために、様々な工夫が用いられる。例としては、冷凍保存、硬化剤・触媒のマイクロカプセル化、硬化温度の高温化などが挙げられる。このため一般に高価であり、ごく一部の市販品を除きほとんどは工業用、特に電子部品用途に用いられている。
- シアノアクリレート系の瞬間接着剤は水を触媒とする特殊なものであり、1液ではあるが上記に当てはまらない。
- 反応系接着剤は硬化の前後において、密度の変化と若干の揮発以外には体積を減じる可能性が低いという特徴を持っている。
固体状の接着剤は感圧・感熱タイプと呼ばれる[4]。
- テープ(Pressure sensitive adhesives)
- 初期状態は接着剤を布や紙・金属箔・セロファンなどのテープ状基礎に塗布または浸漬したもの。
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律第二条第二項、第一種特定化学物質
有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律
- 不特定多数の、しかも常時直接人に触れる可能性の高い家庭用品については、その含有物質について工業用途などと比較すると厳しい制限が施されている。下表は2003年の最新改訂における対象20物質を列記しつつ、特に接着剤関連にあてはまるであろう物質をボールド体で表記している。
物質名 |
基準 |
検査方法
|
ホルムアルデヒド |
幼児用16ppm以下または吸光度差0.05以下,一般用75ppm以下 |
アセチルアセトン法
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ディルドリン |
30ppm以下 |
電子捕獲型検出器付ガスクロマトグラフ
|
4,6-ジクロル-7-(2,4,5トリクロルフェノキシ)-2-トリフルオルメチルベンズイミダゾール |
30ppm以下 |
電子捕獲型検出器付ガスクロマトグラフ
|
有機水銀化合物 |
検出せず |
原子吸光法
|
トリフェニル錫化合物 |
検出せず |
フレームレス原子吸光法及び薄層クロマトグラフ
|
トリブチル錫化合物 |
検出せず |
フレームレス原子吸光法及び薄層クロマトグラフ
|
トリス(1-アジリジニル)ホズフィンオキシド |
検出せず |
フレームレス原子吸光法及び薄層クロマトグラフ
|
トリス(2,3-ジブロムプロピル)ホスファイト |
検出せず |
フレームレス原子吸光法及び薄層クロマトグラフ
|
ビス(2,3-ジブロムプロピル)ホスファイト化合物 |
検出せず |
炎光光度型検出器付ガスクロマトグラフ
|
塩化ビニル |
検出せず |
赤外吸収スペクトル法
|
メタノール |
5w/w%以下 |
水素炎型検出器付ガスクロマトグラフ
|
テトラクロロエチレン |
0.1%以下 |
電子捕獲型検出器付ガスクロマトグラフ
|
トリクロロエチレン |
0.1%以下 |
電子捕獲型検出器付ガスクロマトグラフ
|
塩化水素 |
酸の量10%以下かつ容器が強度を有する |
|
硫酸 |
酸の量10%以下かつ容器が強度を有する |
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水酸化ナトリウム |
アルカリの量5%以下かつ容器が強度を有する |
|
水酸化カリウム |
アルカリの量5%以下かつ容器が強度を有する |
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ジベンゾ-a,h-アントラセン |
防腐剤・防虫剤10ppm以下、防腐または防虫処理木材3ppm以下 |
質量分析型ガスクロマトグラフ
|
ベンゾ-a-アントラセン |
防腐剤・防虫剤10ppm以下、防腐または防虫処理木材3ppm以下 |
質量分析型ガスクロマトグラフ
|
ベンゾ-a-ピレン |
防腐剤・防虫剤10ppm以下、防腐または防虫処理木材3ppm以下 |
質量分析型ガスクロマトグラフ
|
- 建築基準法第二十八条の二
- 2003年に追加された条文は、いわゆるシックハウス症候群の原因物質を規制するために定められた。その骨子は、クロルピリホスの使用禁止と、ホルムアルデヒドを発散する建築資材の使用面積制限(下表)を定めている。これらは原材料のひとつである接着剤の成分にも大きく関連する。
使用制限 |
等級記号 |
等級の名称 |
発散する速度の基準値
|
なし |
F☆☆☆☆ |
新上位規格 |
- 0.005mg/m2h
|
制限あり |
F☆☆☆ |
第3種ホルムアルデヒド発散建築材料 |
0.02mg/m2h - 0.005mg/m2h
|
制限あり |
F☆☆ |
第2種ホルムアルデヒド発散建築材料 |
0.12mg/m2h - 0.02mg/m2h
|
使用禁止 |
F☆ |
第1種ホルムアルデヒド発散建築材料 |
0.12mg/m2h -
|
- RoHS指令
一般的には接着面は平滑なほうが接着に適している[7]。接着面の油分や水分、塵埃などを除去しておく必要がある[7]。木材やコンクリートは良く乾燥させる[7]。
一般的には被着材の片面にヘラ、コテ、ローラーなどで塗布する[7]。瞬間接着剤の場合は被着材の片面に滴下する[7]。
- オープンタイム - オープンタイム(Open time)とは、接着剤を被着材に塗布してから、貼り合わせずに放置しておける許容最長時間。この時間を越えて塗布したままの状態にあった接着剤は充分な接着力を発揮できない。
二液混合型エポキシ系接着剤や第二世代アクリル系接着剤メタルロックなど、2液混合反応硬化の接着剤の場合は、決められた主剤と硬化剤の配合比率で良く撹拌混合する必要がある[7]。
- 可使時間(Working life、ポットライフ - Pot life) - 主に二液型接着剤において、塗布するために混合した状態から、使用できる許容最長時間。この時間を越えた接着剤は充分な接着力を発揮できない。
- 硬化(Cure) - JIS K6800において、硬化とは物理的作用または化学反応によって接着剤の成分が固体に変化することを言う。これに対し、;固化;(Hardening, Solidification)とは物理的作用による変化のみを指す。
- 再活性接着(Reactivation) - 被着材の面に接着剤を塗布した後、再湿や加熱により再び接着性能を発揮させる手法。溶液系接着剤を塗布した切手や封筒の糊口、ワッペンなど固形接着剤を塗布したものなど。
- 初期接着性(タック - Tack) - 被着材と接触させた直後から結合を生じ、接着力を発揮する性質。硬化後に生じる本来の接着力とは別に、利便性を向上させるために添加剤を加えて機能を付加する。
接着面ではない箇所に付いてしまった接着剤を除去するために専用の除去剤(リムーバー)が用いられることもある。ただし、接着面の材質によっては落とせないこともある。
接着面の剥離には、高浸透性の有機溶媒が用いられる。圧力や温度を適切にした環境に長時間放置し、接着剤の樹脂の化学結合を破壊、もしくは物理架橋を解きほぐし、剥離させる。
同じ種類の接着剤でも、その用途に対応した様々な改良が加えられた品番があり、使用法に応じて選定する必要がある。性状評価とは、選定の指標となる物性の評価項目である。
- 接触角
- 被着材との濡れ性。接着剤は基本的に、被着体を十分に濡らせる性質が不可欠であり、これは被着体との相性によって変わる。その性能の指標となるものが接触角であり、目視の他に接触角計といわれる装置で測定される。被着体の上に接着剤(液化された状態のもの)を滴下し、接着剤界面のカーブの微分された傾きと、被着体との角度を求める。この角度が小さければ小さいほどよく濡れるとの判定を行う。
- 粘度(流動性、レオロジー)
- 粘度は、接着剤を塗布する方法と適合するものを選択する必要がある。壁面へ塗布する場合などでは、ある程度の粘度を持っていなければ接着剤が付着した状態を維持できない。逆にノズルなど機械的に塗布する場合には、高粘度の接着剤は不適となる。
- 測定には回転粘度計を使用し、単位はmPa・sまたはPa・s(パスカル秒)にて表示する。
- 構造粘性
- 構造粘性とは、液体を攪拌した際にその粘度が変化する性質を言う。接着剤は一般に、塗布作業を容易にするために攪拌する速度が増すにつれ粘度が低下する傾向(チキソトロピーthixotropy、揺変性)を持たせているが、特に大量生産用を目的とした自動化を行う場合には、具体的な塗布方法にマッチした構造粘性の特性を持つ品番を選定し作業時のトラブルを低減することが求められる。
- 水素イオン指数 (pH)
- 被着材の種類によっては、強酸性または強アルカリ性接着剤が腐食などの影響を及ぼすことがあり、接着剤を選定する際に考慮しなければならない場合がある。
接着力を評価するには、実際に被着材を接着したものを剥がす破壊検査を行なう。接着剤と被着材それぞれの種類や接着条件によって強度は大きく左右されるため、複数の接着剤を評価するに当っては同一の被着材および条件下で接着した検体を準備しなければならない。
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|
接着時の破壊検査方法はJIS K6848にて規定される。破壊検査は、試験サンプルに加える力の方向により3種類に大別される。
- 引っ張り - 接着面に対し垂直方向の応力をかける。
- 剪断(せんだん)- 接着面に対し平行方向の応力をかける。
- 剥離(はくり) - 被着材を引き剥がす。
接着剤の破壊箇所は、一般に以下の3箇所が混合する形で起こる。図は被着材が同一の場合を示しており、異なる材質を接着するケースでは破壊は5箇所の混合となる。これら破壊は一様には起こらず、接着剤の厚さ・破壊検査の方法・サンプルの寸法・破壊速度・寿命・温度や湿度などの外的条件により左右されることを念頭に置かなければならない。これら破壊箇所の判定は基本的に観察手法に依存する。
- 凝集破壊 (cohesive failure)
- 硬化した接着剤層が破壊する。この場合、接着剤が要求強度を満たしていない場合が多く、種類の選定または接着時の条件を適正にする必要がある。
- 接着破壊(interfacial failure、界面破壊)
- 接着剤層と被着材層との境界面が破壊する。この場合、接着力そのものが不充分と考えられる。種類選定または接着条件の適正化とともに、被着材の表面状態についても考慮する必要がある。
- 基材破壊 (adherend failure)
- 被着材そのものが破壊する。この場合、接着剤および接着力は充分な強度を持っており、むしろ被着材の強度を検討する必要がある。
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破壊を伴わない接着剤の検査には打法(タッピング法)もしくは超音波などを使用した透過測定法がある。
- 機能性接着剤
- 物同士をつなぐという本来の性能にその他の機能を付加した接着剤、特殊環境下において使用される接着剤、特殊な接着方法を用いる接着剤などを言う。機能付加の例としては、導電性・電気絶縁性・弾性・耐燃性など。特殊環境の例としては、構造材料・耐熱性・極低温対応・水中硬化・透明・生体用など。特殊な接着方法の例としては、紫外線硬化・電子線硬化・マイクロカプセル型などがある。
- ソルベント法
- メチルエチルケトン(MEK)・トルエンなどの有機溶剤で合成樹脂を溶解融合させたり、アセトンを使い写真フィルムを融着させるなど、溶剤そのものを接着剤として使用する手法。
- 剥離ライナー(Release liner、セパレータ - Separator、剥離紙・離型紙または離型フィルム)
- シリコン塗布などの剥離処理を施した紙またはフィルムなど。両面テープやフィルム状ホットメルト接着剤などの接着・粘着面を保護し、使用時に剥がす。
- 品番
- 一般に、接着剤は多種の素材を複雑に混合させており、特に工業用途においては求められる機能に対応する細かな処方の設計が行われている。このような接着剤それぞれに対応してつけられた商標やナンバーなど。
- ブロッキング (Blocking)
- テープ状接着剤などにおいて、ロールの状態で全体が固まってしまうトラブル。通常テープ状接着剤は塗布基材の背面にブロッキングを起こさない対策が施されているが、経時変化や劣悪な保管状況などにより発生することがある。
- ホットメルト(Hot melt adhesives、Thermoplastic adhesives)
- 熱可塑性樹脂成分の固形接着剤を加熱し融解した状態にして流動性を付与(ホットメルト)した上で塗布し、冷却されることにより、物理架橋が起き硬化・接着する。接着速度が速い反面オープンタイムはほとんど無い。作業性の問題などから融点の高い高分子は使用に向かず、結果として耐熱性は低い。接着剤に熱をかけるために、ホットメルトガン・熱プレス機などの装置、溶融塗布機器やアプリケーターなどの設備などが必要となる。離型紙をつけたフィルム状のものは、片面をワッペンやアップリケなどに接着させておき、必要時に離型紙を剥がして衣類にホットメルト接着させるタイプもある。
一般向けに認知度が高い接着剤メーカー、ブランド
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一般家庭用を主に製造販売しているメーカー、ブランド
業務用のみ製造販売しているメーカー、ブランド
ウィキメディア・コモンズには、
接着剤に関連するカテゴリがあります。
- 『接着剤読本』日本接着剤工業会。
- 『初心者のための接着技術(入門講座編)』日本接着学会。
- 『JISハンドブック接着』日本規格協会。