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 「今年度中にVMware製品から移行してほしい」――。仮想化環境の構築・運用を担うITベンダーのA社の社員は、顧客からこう言われて頭を抱えている。これまで使っていなかったVMware以外の製品の知識や運用ノウハウを学ぶため、「移行先のハイパーバイザーに詳しい協力会社を探している」と話す。

 米Broadcom(ブロードコム)によるVMware製品ライセンスの変更によって大幅な値上げに直面したユーザー企業が、「脱VMware」を検討し始めている。ITベンダーは顧客からの問い合わせに追われている状況だ。

 ハイパーバイザーの観点で見れば、「VMware ESXi」の移行先は大きく3種類ある。Windows Server標準の「Hyper-V」、Linux標準の「KVM」、米Nutanix(ニュータニックス)の「Nutanix AHV」だ。ただし仮想化環境の構成要素はハイパーバイザーだけではない。運用管理機能なども含めた「仮想化プラットフォーム」の観点で、移行先を考える必要がある。

VMware製品からの移行先の候補となる主な仮想化製品
VMware製品からの移行先の候補となる主な仮想化製品
(出所:日経クロステック)
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 「VMware vSphere」と「VMware vCenter」の2種類を中心に使用しているユーザー企業の移行先候補としてよく検討されているのが、米Microsoft(マイクロソフト)のWindows ServerのDatacenterエディションだ。Standardエディションの場合は、Hyper-V上で稼働できるゲスト仮想マシンの上限が2台という制約があるのに対して、Datacenterエディションでは仮想マシンの台数が無制限となるからだ。

 冒頭のITベンダーA社の担当者はこの点を評価し、Windows ServerのDatacenterエディションを移行先として選んだと話す。VMware製品を使っていた従来と比較して、多少の値上がりで済むと見ている。

 マイクロソフト自身が積極的にユーザー企業へ売り込んでいるVMware製品の移行先は、クラウドのMicrosoft Azureである。同社は2024年5月1日(米国時間)に、移行支援策である「VMware Rapid Migration Plan」を発表。Azure上でVMware製品を稼働する「Azure VMware Solution」のユーザーに対して、追加で20%の割引を提供するとした。

 期間が1年間の「予約インスタンス購入オプション」を購入する場合に、追加で20%の割引を提供する。その期間にVMware製品の値上げがあった場合でも、オプション購入時点の価格でサービスを継続利用できる。