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2016年にリリースされたスマートフォンゲーム『ポケモンGO』で再び世界的な脚光を浴びた「ポケットモンスター」。中でも愛らしいポケモン「ピカチュウ」は老若男女、多くの人に親しまれ、世界的にも高い知名度を誇る。任天堂の携帯ゲーム機「ゲームボーイ」用のソフトに登場したこのキャラクターはどのように生み出されたのか。1996年2月に発売された第1弾『ポケットモンスター 赤・緑』から、ポケモンのデザインとゲームの制作を手掛ける「ゲームフリーク」(東京)の杉森建、西野弘二両氏と、ピカチュウのデザイナーで、現在はフリーで活動する、にしだあつこさんの3人が、22年の沈黙を破り、初めてピカチュウ誕生の「舞台裏」を明かしてくれた。(聞き手 読売新聞大阪本社経済部・都築建、東京本社メディア局編集部・中根靖明)
「いかつい」から「かわいい」へ
――にしださんがピカチュウのデザインを手がけることになったいきさつを教えてください。
杉森 元々、ポケットモンスターは「ポケットに入るモンスター」同士を戦わせて遊ぶ(という設定の)ゲームから出発しました。「モンスター」といえば「いかつい」(イメージが一般的)ですから、いかついモンスター同士を戦わせるイメージで途中までは作っていました。ですが、(開発チームの間で)「もう少しかわいいモンスターがほしいね」という話が出てきました。
モンスターを戦わせて、「集めて、交換する」という設定だったので、いかついものだけでは物足りない。いろいろと検討する中で「
当時デザイナーは3人しかおらず、ポケモンのデザインは僕がメーンで手掛けていました。しかし、僕は男ですから、男子の心でデザインしていて「ミュウツー」や「ギャラドス」「カビゴン」「ラプラス」など、いかついポケモンのデザインしか思い浮かばず、「可愛いモンスター」にまで考えが及びませんでした。そこで、女性(デザイナー)のにしださんに加わってもらうことになり、ピカチュウのデザインもお願いすることにしました。
――当初、どんな注文があったのでしょうか。
にしだ 当時、メガドライブ(旧セガ〈現セガゲームス〉のゲーム機)のゲームのキャラクターデザインを担当していました。(ポケモンの担当になり)あったのは「でんき(電気)タイプがほしい」「2回『進化』するモンスターがほしい」というオーダーだけ。何の動物(をモチーフにする)かの指定はありませんでした。
紙には描かず、(ゲームボーイ用の)「ドット画」として(コンピューターを使って直接)デザインしていたため、すでにデータは残っていないのですが、最初にデザインした原形は「大福」のような生き物でした。縦長の大福に、耳が生えているような形でした。あとは皆さんの想像にお任せしますが……今のピカチュウの存在がわからないぐらいでしたね。
杉森 大福のようなモンスターの完成と同時に(にしださんが)「ピカチュウ」という名前を付けました。最初は、頭と体の区別がつかないような形状でしたね……。
にしだ あまり深く考えずに名前も付けたのですが、でんき属性だったので、電気とわかる「ピカ」を入れました。「チュウ」はネズミを意識したわけではなく、(理由は)なんだったかな……とにかく、「ピカチュウ」という名前が先にあって、そこからネズミという設定になったんです。
杉森 結果的に名前に引っ張られ、ネズミになりました。「電気ネズミ」という設定にしたのは確か(田尻智)社長です。