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工藤会判決

捜査幹部「画期的な判決」 他の暴力団に影響も

工藤会トップ、野村悟被告に死刑判決を言い渡した福岡地裁=福岡市中央区
工藤会トップ、野村悟被告に死刑判決を言い渡した福岡地裁=福岡市中央区

特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)が関わったとされる一般市民襲撃4事件で、殺人と組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)などの罪に問われた会トップの総裁、野村悟被告(74)に対する判決公判が24日、福岡地裁で開かれ、足立勉裁判長は、4事件全てで野村被告の関与があったと認定し、野村被告に求刑通り死刑を言い渡した。

この判決を暴力団捜査に携わる関係者らは「画期的な判決。ほかの暴力団組織にも影響を与えるだろう」と評価する。

傘下組員らによる犯罪行為に対する暴力団トップの責任をめぐっては、民事訴訟で認められる流れが定着。実行犯が所属する暴力団の最高幹部に被害者側が損害賠償を求めた訴訟では、幹部の使用者責任を認めて賠償金の支払いを命じる判決が相次いでいる。

最近では、特殊詐欺の被害者が暴力団トップを相手取った訴訟で、詐欺グループの組員が暴力団の威力を利用してメンバーを集め、資金を獲得したと判断。トップの使用者責任を認め、損害賠償の支払いを命じる判決も続いている。

ある警察幹部は「末端組員の行為でも責任を問われることは、暴力団幹部にとってはプレッシャーになっている」としながらも、「民事訴訟では金を払えば解決できるため、与えられる打撃は限定的な面がある」と指摘。その点、今回の野村被告への死刑判決は「刑事罰、それも死刑となれば衝撃度は桁が違う」とみる。

暴力団捜査では実行犯の組員を逮捕した後、犯行を指示したとみられる上層部への「突き上げ捜査」を進めるのが常道だ。しかし、実行犯が指示を自供することはほとんどなく、トップが立件される例は極めて少なかった。直接証拠のない中、暴力団トップに極刑を言い渡した今回の判決は、暴力団犯罪全体への抑止力になるとの期待がある。

ただ、今回の立件手法を即、ほかの暴力団捜査にも適用できるかについては慎重な見方もある。昨年末時点での構成員が福岡県内外で約270人(警察庁まとめ)という工藤会に対し、国内最大の勢力がある特定抗争指定暴力団「山口組」は約3800人(同)。傘下組織の数にも差はあり、別の捜査幹部は「組員の犯行を最高幹部が把握しているかどうかを立証するのは容易ではない」と話す。

だが、暴力団情勢は予断を許さない。山口組から特定抗争指定暴力団「神戸山口組」が分裂して今月27日で6年となるが、両組織の抗争状態は続いている。過去には暴力団の抗争に一般市民が巻き込まれた例もあり、捜査幹部は「今回の手法も参考に、暴力団トップの立件、組織の壊滅につなげていかなければならない」と話している。

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