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日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脳血管性痴呆の病態と治療
宇高 不可思織田 雅也亀山 正邦
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キーワード: 脳血管性痴呆, 予防, 治療
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2004 年 41 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

脳血管性痴呆 (VD) は脳血管障害 (CVD) による痴呆の総称で, アルツハイマー型痴呆 (AD) とともに老年期痴呆の大部分を占める. VDは単一疾患ではなく, 病因, 病態, 神経症候, 経過などは多様で, 病態, 診断, 治療, 予防も異なる. 診断の要諦は, 1) 痴呆がある, 2) CVDがある, 3) 両者に因果関係がある, の3点であるが, 診断基準による感度, 特異性の差が大きい. VDの原因は脳梗塞が最も多く, 大脳皮質型, 局在病変型, 皮質下型に大別される. VDと診断されてからの治療は困難で, 無症候性脳梗塞や血管性認知障害 (VCI) などの前駆段階から予防的治療を開始し, 痴呆への進展を防ぐ意義は大きい. VDの予防はCVDの一次, 二次予防につきる. CVDの危険因子は加齢のほか, 高血圧, 糖尿病, 心房細動, 虚血性心疾患, 肥満, 高脂血症, 喫煙, 多量飲酒, 頸動脈狭窄, 一過性脳虚血発作などが挙げられる. 脳梗塞は, アテローム血栓性脳梗塞, 心原性脳塞栓, ラクナ梗塞, その他に分類され, これら病型間ではそれぞれ機序や危険因子が異なるため, 個々に適切な予防対策を講じる. CVDの二次予防, および, 痴呆化阻止という面からの至適血圧値にもきめ細かい注意が必要である. 抗血小板薬, 高血圧, 糖尿病, 高脂血症のコントロール, ワルファリンによる塞栓予防などを行う. VDの中核症候としての認知機能障害に有効な薬物はないが, ADに用いられる中枢性コリンエステラーゼ阻害薬の効果が期待される. リハビリテーションと環境調整, しばしば合併する抑うつ, 不安, 睡眠障害, せん妄, 興奮, 意欲・自発性低下, アパシー, 情動失禁などの精神症状や, その他, QOLの悪化をきたす可能性のある諸症候に対しての治療も並行して行う必要がある.

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