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Billboard JAPAN


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洋楽が聴かれなくなった? “JAPAN Hot 100”チャートイン楽曲の国別構成

インタビューバナー

 「洋楽離れ」「第5次韓流ブーム」などのフレーズが話題になっている今、そのような傾向は、ヒットチャートにどのように反映しているのか。本稿では、2017年から2023年まで、年間Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”で2000位以上にチャートインした楽曲の国別構成から、近年の動向を考察する。

楽曲の国別比率

 まず、2017年から2023年まで、チャートインした楽曲の国別比率は以下となる:


 表が示した通り、日本の楽曲数はこの7年間80%前後に維持しており、“JAPAN Hot 100”で大多数を占めている。また、韓国の楽曲数は、ここ数年増減は変動しているが、結果的に見ると2017年の5.55%から2023年の9.7%、約倍増を果たした。一方、アメリカの楽曲数は7.55%→3.85%、その他地域は4.8%→2.15%と減少傾向が見られ、イギリスの楽曲数は3%前後で、一定の存在感を保っている。

各国楽曲のポイントの比率

 続いて2017年から2023年まで、各国の楽曲が占めるポイントの比率は以下の通りとなる:


 日韓の楽曲の合計ポイントが占める割合に全体的に増加傾向が見られる。それに対して、英米、そしてその他地域は大幅に減少している。アメリカは8.11%→0.94%、その他地域は4.42%→0.47%と、イギリスは2.89%→0.61%と、どちらも2017年の数分の1になっている。

 以上をまとめると、“JAPAN Hot 100”において、まず日本の楽曲は安定してチャートイン曲数とポイント両方とも圧倒的に増加している。次に、韓国の楽曲のチャートイン曲数とポイントの両方とも同じく増加傾向が見られる。それに対して英米、およびその他地域は両方とも減少傾向だ。

日本音楽市場の推移

 では、このような結果の背後にどのような原因があるのか?まずは近年日本の音楽市場の推移を振り返ってみよう。


※2024年以降は推測値
※一般社団法人日本レコード協会および一般社団法人コンサートプロモーターズ協会のデータに基づき、弊社が作成

 日本の音楽市場の推移を見ると、2020年のコロナ禍の影響で、アルバムを中心とするフィジカルセールスとライブコンサートが激減する中で、ストリーミングは成長傾向を堅持した。その時期に、シェアを大きく拡げたK-POPとボーイズグループが牽引してフィジカルセールスの規模が2021年から復活し、活動制限の解除に伴いライブコンサートの規模も増加している。音楽の消費の中心がストリーミングに移行したこと、そしてK-POPの世界的ブームが、近年の“JAPAN Hot 100”にも反映されたと考えられる。

“JAPAN Hot 100”で見られる変化

 まずは、YOASOBI、瑛人、優里らをはじめとするTikTokやSNSでブレイクしたアーティストがチャートに増えた。そして、2018年リリースされたヨルシカ「ただ君に晴れ」が2020年にヒットするなど、リリース時間と関係なく、より多様な楽曲がチャートインするようになった。コロナ禍において、自宅待機やテレワークといったライフスタイルの変化により可処分時間が増加、音楽を聴く時間も増え、マスメディアでプロモーションされない旧譜も簡単にアクセスできるようになったことが原因の一つかもしれない。そのため、近年“JAPAN Hot 100”で日本の楽曲の数が増え、結果的に対象の2,000曲から洋楽が結果的に押し出されたと考えられるだろう。

 そして、K-POPが“JAPAN Hot 100”での存在感がますます大きくなっている。その代表例はBTSになるだろう。具体的なポイント構成を見ると、BTSが韓国アーティストの合計ポイントに占める割合は、2018、2019年の20%前後から2020年に30%に増加し、2021年は59%という過半数以上を占める結果に急増した。その牽引効果もあって、2021年K-POPの合計ポイントが全体に占める比率も9.18%→10.91%に上昇し、近年のピークに達した。BTSは2022年より活動を一時休止しているものの、SEVENTEENやStray Kidsをはじめとするボーイズグループや、NewJeansが代表するガールズグループが引き続き活躍し、チャートインした韓国アーティストの楽曲数も8.1%→9.7%に増加した。

 日本国内のアーティストや韓国アーティストの競争力が増す結果、英米をはじめとする洋楽の楽曲数とポイントは相対的に減少している。また、コロナ禍で国際的なプロモーション活動が制限されたことにより、洋楽アーティストが日本市場に直接アプローチする機会が減少した。これにより、洋楽が日本のチャートに一層入りにくくなったと考えられるだろう。

 しかし、活動制限が解除され、国際的なライブコンサートが再開された今、洋楽アーティストの日本市場でのプレゼンスが再び強化される可能性がある。ライブパフォーマンスはファンとのエンゲージメントを高め、楽曲の人気を押し上げる重要な要素と考えられる。例えば、今年2月に東京ドームで4日連続の来日公演を行ったテイラー・スウィフトは、公演の次週となる2月14日公開の“JAPAN Hot 100”で「アンチ・ヒーロー」「アンチ・ヒーロー」の2曲がチャートインした。

 今後海外の楽曲がどのように日本に浸透するか、そして日本の楽曲がどのように海外進出を果たすか。ぜひ、ヒットチャートを通じて注目していただきたい。

※記事初出し時に、「日本音楽市場推移」のグラフに誤りがございました。お詫びして訂正いたします。

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