米政府、ヨルダン川西岸の過激派入植者に制裁 ビザ発給禁止

武装したイスラエル人入植者(11月)

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アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は5日、イスラエルが占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区で暴力行為をはたらく過激派に対して、ビザ(査証)の発給を禁止すると発表した。

ヨルダン川西岸では、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが10月7日にイスラエル南部を襲撃し、ガザ地区で戦争が起こって以来、攻撃が急増している。

ブリンケン氏は今回の措置について、ヨルダン川西岸でパレスチナ人を攻撃するイスラエル人入植者が対象だと説明。暴力行為に問われたパレスチナ人に対しても、同様にビザ発給を禁止すると、声明で述べた。

「アメリカはイスラエル政府に対し、ヨルダン川西岸でパレスチナ人に暴力による攻撃を行った過激派の入植者の責任を問うため、もっと努力する必要があると強調してきた」

「バイデン大統領が繰り返し述べているように、これらの攻撃は容認できない」

米国務省のマシュー・ミラー報道官は、過激派のイスラエル人とその家族ら「数十人」がビザ発給禁止の対象になると説明。対象者の氏名の公表は、アメリカの法律で禁じられているとした。

アメリカ政府は、ヨルダン川西岸のイスラエル人入植者に対するイスラエル政府の姿勢に以前から不満を抱いており、今回の措置はそれをあらためて示すもの。イスラエル極右のイタマール・ベン・グヴィール国家安全保障相とベザレル・スモトリッチ財務相は、共に入植者で、ヨルダン川西岸での暴力行為を大した問題ではないと印象づけようとしているとして、以前から批判されている。

ヨルダン川西岸のパレスチナ人は、イスラエルの入植者たちがガザでの戦争に乗じて、土地を奪おうとしているとBBCに話している。

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ヨルダン川西岸と東エルサレムは、1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領。以来、250以上の入植地に70万人以上のユダヤ人が住んでいる。国際社会の大多数は入植を国際法違法だとみなしているが、イスラエルとアメリカはこの解釈に異議を唱えている。

国連によると、ヨルダン川西岸では10月7日以降、入植者によるパレスチナ人への攻撃が314件記録され、パレスチナ人が死傷したり、所有財産に被害を受けたりしている。一方、治安部隊員3人を含むイスラエル人4人が、パレスチナ人による攻撃で死亡している。

ビザなし渡航を認めた直後

米政府は今回の決定の1カ月ほど前に、イスラエルをビザ免除プログラムの対象とし、イスラエル国民のビザなし渡航を認めたばかりだった。

AP通信によると、今回の発表の対象となる人々は、このプログラムの対象外となる。現在アメリカのビザを所持している場合は、旅行許可が取り消される。

アメリカのパスポートを持っている場合は影響を受けない。

ロイター通信によると、イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は米政府の決定を受け、「悲しいことに、過激派による暴力があり、私たちはそれを非難する」、「イスラエルなどの法治国家では、暴力の行使権は政府に認められた者だけに属する」と話した。