トランプ氏の大統領就任を間近に控えた今、アジアに垂れ込めている懸念は、貿易や領有権を巡る同氏の挑発的な発言が軍事衝突の引き金になるのかというものだ。
トランプ氏の保護貿易主義的な措置では新たな「中国ショック」に対応できない。中国は、米国の繁栄をけん引し雇用を生み出すような先端技術を確保しようとしているのだ。
中国が米海軍の無人潜水機を奪取したことは、トランプ次期米大統領へのしっぺ返しとして意図されたものだろう。
金融危機後の米国が苦しんでいた時、中国の好戦的な態度は自信過剰で始まった。だが中国がトランプ次期大統領との駆け引きの仕方を模索する今、経済の風向きが反転しつつある。
トランプ氏は台湾総統と異例の電話会談をしたが、台湾の人々は中国の怒りの矛先が米国ではなく台湾に向けられるのを恐れ、報復措置に身構えている。
タカ派の中には中国のご機嫌をうかがうのではなく、軍事協力の強化を伴う台湾支援の姿勢を明確に打ち出すという目的を持っている向きもある。
米国の労働者が中国との雇用競争による脅威をここまで感じたことは19世紀後半以来なかったことだ。
北朝鮮による弾道ミサイルと核の脅威は高まっている。もし解決策というものがあるとすれば、それは最大の支援国・中国を通じたものになるだろう。
貿易戦争に勝者なし。トランプ次期大統領が中国と貿易戦争を始めるなら、敗者は米国のブルーカラー労働者だ。
中国を統治している高齢の保守派はヒラリー・クリントン氏に好意を持っていないが、少なくとも彼女はよく知られた存在だった。だが大統領に当選したドナルド・トランプ氏はどうか。
クリントン氏とトランプ氏のいずれが勝つにしても、勝者は貿易と投資から南シナ海に至るまで対中政策で従来以上に強硬な路線を追求する公算が大きい。
米国の威信が傷つけられ中国が戦術的な勝利を収めたとしても、東アジアの地政学的なせめぎ合いが結末を迎えるには程遠い。
グローバル化による衝撃は中国で米国同様の政治的・社会的緊張を生み出している。習近平氏はトランプ氏と同じくこの変化に対応している。